AdWorldレポート【後編】これからのインターネット:新興カルチャー&トレンド紹介

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こんにちは、編集チームのA.O.です。

2021年10月27日より3日間(米国時間)、デジタルマーケターに向けた世界最大のオンラインイベントの一つであるAdWorld2021が開催されました。今回のイベントでは、世界の媒体社・広告会社・ブランド企業から80名以上のスピーカーが集まり、7万人を超える参加者に向けて先見性のある事例やアイデアの共有が行われました。

100以上のセッションが行われ、様々なトピックがあがりましたが、特に共通した課題・関心として2つのテーマがありました。
マーケティングスキル:プライバシーの尊重が求められるクッキーレス時代に対応し、テクノロジーに頼らないマーケティング力を高める方法
② インターネットの未来:XR(VR/AR)などの新技術、クリエイターエコノミーなどの新興カルチャーを使って、ユーザーと繋がる方法

後編では、2つ目のテーマである新興カルチャーなどインターネットの未来について紹介したセッションをレポートします。
AdWorldレポート【前編】はこちら

メタバースやZ世代など、気になるトレンドを紹介
SNSの発展やメディア消費行動の変化などの社会的変化に合わせ、近年のインターネット文化は目まぐるしく変容しています。
どのようなテクノロジーが勃興しているのか?若者文化はどのように変わっているのか?
デジタルマーケティングに携わるうえで役立つこと必至な、さまざまな変化や最新トレンドを紹介する6つのセッションをレポートします。

目次
(1)Web3.0というコミュニティ時代の到来:マーク・アダムス
(2)メタバース時代の10つのトレンド:キャサリン・ヘンリー
(3)コロナ以降の動画コンテンツの作り方:マーク・レフコウィッツ
(4) Z世代に向けたMeme活用事例:ケヴィン・クワン
(5)TikTokクリエイターマーケティング入門:マギー・ロウワー
(6)小売業におけるAR活用の展望:ミシェル・ロマノフ、マット・マクゴーワン
(7)後編のまとめ

(1)Web3.0というコミュニティ時代の到来:マーク・アダムス

マーク・アダムス
Vice
副社長

若者向けデジタルメディアViceの副社長マーク・アダムス氏は、インターネットはステータスを誇示する場所から、コミュニティの絆を育む場所へ変化したと分析しています。
アダムス氏が語ったポイントは次のとおりです。

■現実世界と地続きだったWeb2.0の衰退
従来のWeb2.0と呼ばれるインターネットは、現実世界と地続きの場所だった。ユーザーがオフラインの生活の様子をオンラインにアップロードするWeb2.0では、SNSは人のステータスの判断基準となり、ユーザーはそのステータス重視のインターネット環境に疲弊したのだ。

■Web3.0とは、ユーザーのオフラインの生活から無関係な趣味コミュニティ
Web3.0の概念として、ユーザーがインターネットに求めているのは自分を演出して人気を得ることではなく、帰属する場所・つながりなである。それは前述のWeb2.0への反動といえるものだ。
ユーザーがどんなにニッチな趣味を持っていても、インターネット上では世界中の同好の士が見つけられる。現実の所在地や交友関係に関係なく、ライフスタイルや嗜好が近い人々が集うコミュニティがWeb3.0であり、その時代はすでに始まっている。

■これからのマーケターは、コミュニティオーガナイザーになる必要がある
Web3.0では、性別・年齢・居住地域などのデモグラフィック、つまり「そのユーザーがどんな人間か」を反映しないセグメンテーションは通用しない。今後、マーケターはそうしたコミュニティを見つけてきてマネジメントすることが求められるだろう。

(2)メタバース時代の10つのトレンド:キャサリン・ヘンリー

キャサリン・ヘンリー
MediaMonks
シニア・バイスプレジデント

デジタル制作会社MediaMonks所属で、企業向けにイノベーションコンサルティングも手掛けるキャサリン・ヘンリー氏による、メタバース時代のヒントとなる10のトレンド紹介です。
ヘンリー氏が語ったポイントは次のとおりです。

■メタバース時代はすでに始まっている
メタバースを現実のバーチャル化と定義づける、いわゆるメタバース時代は既に始まっている。実世界からバーチャル世界に没入できるVR技術は現在アメリカの人口の約20%に利用されており、また実世界とバーチャル世界を同時に視聴できるARも積極的に活用されている。

■ブランド企業や広告会社が知っておくべき10のポイント
①アバター:ユーザーはアバターで自分のアイデンティティを表現し、ネットコミュニティに参加するようになる。アバターをSNSに代わるリーチ手段として認識してゆく必要がある。

②バーチャルインフルエンサー:生身の人間と違い四六時中コンテンツを作ることができるため、より多くのコンテンツを供給できるようになる。

③ミラーワールド:メタバースでは、現実世界の制約に縛られないクリエイティブが可能になる。それを有効活用できるクリエイターを見つけることがカギになる。

④リッチデータ:VRを通じて、ユーザーの身体や動きなど、今まで測定できなかったデータが入手可能に。コンテンツのどこに注目していたか、なども判定できる。

⑤中国メタバース:WeChatはメタバースのプロトタイプ。友達との会話から政府への納税まで、VR機能こそないものの、それ以外は現実生活の全てがひとつのプラットフォーム上でまかなえ、独自通貨を持つ点で、ほぼ完全な現実の代替と言える。これからのメタバースの試金石として参考にできる。

⑥デジタル通貨:一過性のものではなく、今後も続くトレンドである。自社で作るのか、利用するのか、使い方を考えておくべき。

⑦デジタルグッズ:既に現実世界に存在する製品の多くが3D設計図を用いて作成されており、それをベースにデジタルアイテムを作ることが容易になっている。

⑧NFTs:今後、購買可能なものはすべてNFTになってゆく。アート以外でも、あらゆるIP、スポーツなどコンテンツの一部といったすべてが販売可能になる。

⑨Z世代:理想の仕事はYouTtuber と答えるような、クリエイター意識が高く、ゲーマーが多い世代である。コミュニティに参画したい、また自分の創造を見せつけたいという人が多い。こうした若い世代が時間を費やしたくなるような体験を提供できるかが重要になる。

⑩ライブコンテンツ:コロナ禍にFortnightなどで開催されたライブ事例がその収益性を証明済み。88%のユーザーはコロナ後もオンラインライブに参加し続けると回答。絶え間ないコンテンツ供給が求められる今後、オンラインライブは続いてゆく。

(3)コロナ以降の動画コンテンツの作り方:マーク・レフコウィッツ

マーク・レフコウィッツ
YouTube
APACパートナー開発ディレクター

YouTubeのAPAC地域パートナー開発ディレクターであるマーク・レフコウィッツ氏による、コロナ禍で人気だった動画の傾向を分析したセッションです。
レフコウィッツ氏が語ったポイントは次のとおりです。

■コロナ禍で人々が求めたのは、つながりとコミュニティだった
コロナ禍で人気となった動画コンテンツの特徴は、人と繋がれること、共感できるコンテンツである。
具体的に言うと、「繋がり」は、他人と同時に視聴できるライブストリーミング。また「共感」としてはコンテンツにパーソナルな要素があることが重要である。
例えば、米トークショーの司会者は、従来のスタジオ収録から、自宅から部屋着で収録するスタイルに変更した結果、この番組のYouTube上の視聴者は45%増加した。これは、TVパーソナリティに完璧さではなく、親近感を求めるユーザーの心情にマッチした成果である。

■視聴者をただの傍観者にせず、参加させるコンテンツが効果的
こうしたコロナ禍の傾向から、ユーザーを一消費者にするのではなく、コンテンツの一部にすることが今後の動画コンテンツの人気に繋がるだろう。
例えばTikTokのダンスチャレンジは、素人でも気軽に参加できる難易度が魅力的である。またゲーム由来の手法である一人称視点(POV)から撮られた動画も人気で、ユーザーは没入感ある視聴体験が可能だ。

(4) Z世代に向けたMeme活用事例:ケヴィン・クワン

ケヴィン・クワン
9GAG
ゼネラルマネージャー

どの世代の消費者も「買わされている」と感じるようなマーケティングには抵抗があるでしょう。
香港の代理店9GAGのゼネラルマネージャー、ケヴィン・クワン氏は、特にその傾向が強いZ世代に対し、Memeを活用することでアピールした事例を紹介しています。
クワン氏が語ったポイントは次のとおりです。

■MemeはZ世代の共通言語である
Z世代の特徴は、ニッチで共感しあえるようなユーモアセンスを持っていること。そのような若い世代は、Meme(インターネットミーム)を日常生活の中で頻繁に使用している。
Memeとは、ネット上で流行し、何度も模倣され、時に改変されつつ拡散される画像や映像、言い回しなどを指す。英語圏でよく使われる言葉で、日本ではコラ画像や流行りのネタコピペなどが該当するのではないか。
Memeをクリエイティブに活用すると、日常会話のように自然とZ世代にアピールすることができる。

■事例①映画『トップガン・マーヴェリック』:80年代映画の続編を10代にアピール
1986年に公開した映画『トップガン』の続編映画への興味を喚起するために、9GAGは映画本編の画像を素材として配布し、ユーザー自身にMemeを作ってもらうように公募した。

■事例②ゲーム『サイバーパンク2077』:既に流行しているMemeに後のり
公開延期を繰り返したという舞台裏の事情をネタに、既存のMemeにゲームキャラクターの顔写真などをコラージュしたクリエイティブを作成した。

(5)TikTokクリエイターマーケティング入門:マギー・ロウワー

マギー・ロウワー
HootSuite
CMO

プロモーションに若者文化を活用する際、「わざとらしさ」を避けるにはどうすればよいのでしょうか?
SNSマーケティングソフト提供会社HootsuiteのCMO、マギー・ロウワー氏は、実際にTikTokコンテンツを作っているクリエイターに任せるべきと提案します。
ロウワー氏が語ったポイントは次のとおりです。

■インフルエンサーマーケティングから、クリエイタードリブンマーケティングへ
「わざとらしさ」を感じる広告への忌避感から、Z世代は特に自分自身をコンテンツ化するインフルエンサーよりも、コンテンツの作り手であるクリエイターを支持している。

■クリエイターと協力し、コミュニティを構築しよう
Z世代にアピールするにはプラットフォームや文化の理解が必要となり、ゼロからブランドのコミュニティを作ろうとするのは難しい。ゆえにファンに価値還元ができるクリエイターと組み、彼らの既存コミュニティに参画する方が効率的だ。

(6)小売業におけるAR活用の展望:ミシェル・ロマノフ、マット・マクゴーワン

ミシェル・ロマノフ
Clearco
共同創業者・社長
 
マット・マクゴーワン
Snapchat Canada
ディレクター兼ゼネラルマネージャー

投資会社CEOを務めるミシェル・ロマノフ氏と、Snapchatカナダのゼネラルマネージャー、マット・マクゴーワン氏が、コロナ以降のビジネストレンドについて合同セッションを行いました。
両氏は、コロナ禍に起きたEコマースへの移行は今後も続き、AR(拡張現実)技術が活用されるだろうと見込んでいます。
彼らが語ったポイントは次のとおりです。

■コロナ以降もユーザーはEコマースを活用する
顧客は常により便利な購買方法を求めており、コロナ禍で起きた大幅なEコマースの普及は今後も続いてゆくだろう。

■ARの小売り利用は、在庫管理と顧客満足度の向上をもたらす
Snapchatでは、サングラスなどをフィルターでオンライン試着し購入することが可能である。こうしたAR技術はユーザーがより正確な購買をするのに役立ち、返品の減少や満足度の向上につながる。
全世界の75%が3年以内にARユーザーになるという予想もあり、ARはエンタメや広告などの形で日常生活に欠かせないものになる。また、現在のキーボードのようなインプット装置としてカメラが利用されるようになるだろう。

(7)後編のまとめ

本記事では、Ad World Conference 2021で発表された新興カルチャーやトレンドについてのインサイトとして、6つの講演をご紹介しました。
この約2年間、新型コロナウィルスの発生・感染拡大という世界規模での未曽有の事態を受け、今まで当たり前だった日常の多くが変化しました。人とのつながりやコミュニティの重要性が見直され、XRの新興テクノロジーを使った新しい生活様式が模索されています。そうした社会の変化を受け、デジタル・SNSネイティブ世代を筆頭に新しいインターネット文化が醸成されています。
このようなトレンドの知見は、デジタルマーケティングに役立つだけでなく、今後のインターネットの未来を想像するヒントになるでしょう。

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