AdWorldレポート【前編】プライバシー尊重時代のマーケティング

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こんにちは、編集チームのA.O.です。

2021年10月27日より3日間(米国時間)、デジタルマーケターに向けた世界最大のオンラインイベントの一つであるAd World Conference 2021が開催されました。今回のイベントでは、世界の媒体社・広告会社・ブランド企業から80名以上のスピーカーが集まり、7万人を超える参加者に向けて先見性のある事例やアイデアの共有が行われました。

100以上のセッションが行われ、様々なトピックがあがりましたが、特に共通した課題・関心として2つのテーマがありました。
マーケティングスキル:プライバシーの尊重が求められるクッキーレス時代に対応し、テクノロジーに頼らないマーケティング力を高める方法
② インターネットの未来:XR(VR/AR)などの新技術、クリエイターエコノミーなどの新興カルチャーを使って、ユーザーと繋がる方法

この2テーマについて、前後編に分けてレポートします。
前編では1つ目のテーマであるマーケティングスキルに関するセッションを紹介します。

プライバシーを尊重しながら、ユーザーと向き合う―新しいマーケティングの形を目指して
近年、デジタルマーケティングの領域においても個人情報保護のニーズが高まり、広告業界には大きな転換期が訪れています。サード・パーティ・クッキー規制などにより、これまでのようにオーディエンストラッキング等のマーケティング技術には頼れなくなることが想定されます。
今回紹介する登壇者は、そのようなクッキーレス時代でもクライアントに価値を提供し続けるマーケターであり続けるには、プライバシー保護に敏感になるべきだと指摘しています。
今後のマーケターの在り方について、Yahoo!元副社長でベストセラー作家のゴーディン氏、マーケティングソリューション提供会社CEOのデイス氏、そしてMeta(Facebook)のロス氏の3名の講演をレポートします。

目次
(1)時代を超えたマーケティングのすすめ:セス・ゴーディン
(2)クッキーレス時代に選ばれるマーケターになる方法:ライアン・デイス
(3)Metaが開発する、プライバシーとパーソナライゼーションを両立する技術:ジャン・ロス
(4)前編のまとめ

(1)時代を超えたマーケティングのすすめ:セス・ゴーディン

セス・ゴーディン
Seth Godin Productions
創設者兼CEO

Yahoo!元副社長であり、マーケティングに関するベストセラー著作の数々で知られるセス・ゴーディン氏。当セッションは、メディア消費とプライバシー意識が変化した今、ブランドはユーザーを追いかけるかわりに対話しようとすべきだ、と提唱しています。
セス氏が語ったポイントは次のとおりです。

■ユーザーの意思を尊重し、双方向の対話を築くべき
トラッキング広告のような一方的なコミュニケーションは結果的に多くのユーザーを不快にしたであろう。ゆえに、今後はユーザーの意思を尊重して同意を得る「パーミッションマーケティング」を行い、双方向の対話を築くべきである。

■マスマーケティングの効果は限られている
人々がコンテンツを見る媒体は、これまで主流だったマスメディアから多様なチャンネルを持つインターネットにシフトした。大勢の認知を高めるため、ターゲティングせず様々な媒体のプレミアム広告に出稿するには多額のコストがかかる。そうしたマス層向けのマーケティングで利益を得られるのは、既に大衆に普及していて、あとは店頭で選ばれるきっかけを作るだけ、といったトップブランドのみだ。多くのブランド企業にとっては、高い費用を費やしてマス層の注目を集めるより、少数の熱心なファンを育てるほうが効率的である。

■大衆にブランドの命運を託さず、ユーザーと対話してファンを獲得せよ
近年のマスメディアの衰退でマス層からの注目を得るマスマーケティングは高価に、またプライバシーの観点からユーザーから同意を得ることはより貴重になっている。そのため、ブランド企業は自社ユーザーと向き合い、対話することでファン層を醸成すべきだ。

(2)クッキーレス時代、選ばれるマーケターになる方法:ライアン・デイス

ライアン・デイス
The Scalable Company、DigitalMarketer
CEO

長年Eメールターゲティングなど多くのネットマーケティング手法を広め、現在はマーケティングソリューション提供会社The Scalable CompanyのCEOを務めるライアン・デイス氏。
当セッションでは、クッキーレス時代、ターゲティングやトラッキング技術に頼らずとも価値提供できるマーケターになる方法を提案しています。
デイス氏が語ったポイントは次のとおりです。

■時代は変われど、広告の基本三要素は変わらない
<デイス氏が提唱する広告の三要素>
①Right Message=ブランドのメッセージ、コピーライティングなど
②Right Person=ユーザー、オーディエンス
③Right Time=広告露出のタイミング

過去20年間、トラッキング技術を活用すれば、②のオーディエンスと③の広告露出のタイミングを最適化し、効果を上げることは可能だった。しかしその結果、近年のマーケターは①のブランドのメッセージを蔑ろにしていると感じている。
今後クッキーレス化が進めば、トラッキング等の技術はより高価になり、費用対効果の観点から諦めるべき時がくるのではないか。これからもマーケターが価値を提供するためには、ブランドのメッセージをライティングできる力が必要になる。

■クッキーレス時代、マーケターとして成長する方法
成長のヒントは、インターネット以前の広告技術やコピーライティング法を学ぶことや、よりクライアントと向き合ってブランド理解を深めることである。

(3)Metaが開発する、プライバシーとパーソナライゼーションを両立する技術:ジャン・ロス

ジャン・ロス
Meta
エージェンシーパートナー

当セッションでは、Meta(Facebook)でAPAC地域のエージェンシーソリューションマネージャーを務めるジャン・ロス氏より、同社のプライバシー保護姿勢と取り組みについて紹介がありました。
ロス氏が語ったポイントは次のとおりです。

■生活者がブランドに求める期待値は向上した
プライバシー尊重や社会問題への取り組みなどにおいて、近年ユーザーはブランドにより積極的な姿勢を求めるようになっている。
Metaとしてもこのニーズを受け止め、プライバシー尊重への取り組みを進めている。

■しかし、パーソナライゼーションは今後も必要とされる
時に、Metaはユーザーへの見返りなしにデータを搾取していると非難されることがある。しかし、インターネット上には大量の情報が溢れており、データを使用してパーソナライズしなければユーザーは興味のある情報にたどり着けず、ユーザーエクスペリエンスが損なわれてしまう。
ユーザーに関係する情報を提供するため、これからもデータを活用したパーソナライゼーションが必要である。

■プライバシーとパーソナライゼーションを両立するテクノロジー:PET
Metaでは、個人情報の収集を減らしつつ、ユーザーごとに最適化された体験を維持するため、プライバシー・エンハンス・テクノロジー(PET)の開発を進めている。

<PETの例>
・マルチ・パーティ・コンピュテーション:複数の保持者が提供するデータを結合&暗号化することで、誰もデータの全貌が見られないままCV計測のみ可能にする。
・オンデバイスラーニング:外部にデータを送らず、ユーザーのデバイス内で解析を完結させる。
・ディファレンシャル・プライバシー:収集されたデータに少量の乱数を加えることで、データの再識別を防ぐ手法。

(4)前編のまとめ

以上、今回紹介した3つのセッションについてまとめます。

■プライバシーを尊重する姿勢は必須
3名の登壇者いずれも、プライバシーの問題を重視する必要性が強調されていました。クッキーレス時代に備えるため、またユーザーからの期待に応えるためにも、マーケターにとってプライバシーに敏感であることは必須条件となっているようです。

■ユーザーを追い掛けるかわりに、魅了する方法を考える
そして、クッキーレス時代のチャレンジをマーケターのステップアップの機会としてとらえています。広義に解釈すれば、マーケティングとは人の感情に訴えかける手法といえます。パフォーマンス主義から脱却し、ユーザーの心をつかむコミュニケーションを模索する。デジタルマーケターにも、そのような基本に立ち返ることが求められているのかもしれません。

後編では、新興カルチャーなど、インターネットの未来について紹介したセッションをレポートします。

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